「癒し」という言葉が使われるようになったのは、90年代に入ってからそうです。それまでは医学や宗教では使われていましたが、日常的な言葉ではありませんでした。1990年代には流行語大賞にも選ばれて、癒し=ヒーリングという言葉はブームとなり定着しました。癒しとは、人間が生まれながらにもっている「生きていく力」が、何らかの外圧によって歪みを生じたときに、それを元のフレットな状態に戻すプロセスの一つと言われています。ヒーリングミュージック、ヒーリングアート、または動物セラピーなど、様々な癒しの手段がありますが、実は、植物がどんな癒しを人にもたらすのか、また、なぜ癒しをもたらすのかという実験を行いました。

あなたに嫌な事があった時、その嫌な事が少しでも解消される=癒されると思う空間ありますか?

そのような空間が思い浮かぶ人は、その空間がどのような要素で構成されていますか?

結果は、若者から高齢者まで約90%の人が「癒しの空間」を想起出来ると答えています。そして、その空間構成要素の87%が花・樹木・草・森・水・空などの自然要素であると答えています。また、60代以上86% 30~50代の中年94%、20代の若者84%が、植物(観葉植物など)のある風景に癒されるとしています。なぜ植物(観葉植物など)が存在することによって癒されると感じる人が多いのかは、植物のある風景の中に身を置く、もしくはそれを眺めることによって癒さられるという回答が多いようです。植物を眺める=視覚的行為や香りを嗅ぐなどの嗅覚を介して、感覚器官の統合と体験の合体によって包み込む空間をイメージし、癒されると判断したのでは、、という事ではないかと考えています。

一方で、「癒しの空間」として自然要素をあげた87%の内、7%は植物を眺める」という行為ではなく「植物を育てる」行動で癒されるとしています。植物を眺める事での五感への刺激を受けて癒される場合と、耕したり植えたりするという行動をすることによって癒される場合と2種の本能を持っていると考えられます。

植物を介在させた癒しは、鑑賞する、育てるという感覚と行動の両面があり、「紅葉狩り」「花見」など植物が豊かに生育する空間で散策するという行動がストレス解消に有効なのです。また、ガーデニングがストレスを発散させ、生活のリズムを取りもどす為に有効といわれるのは、この行動の部分なのです。植物は人間の本能に反応し、癒しという自己治療力をもたらす手段となります。これは、植物(観葉植物など)が物ではなく、人間と同じ一つの生命体だということです。そこからくる安らぎもあるのではと思います。